どうも!靴磨き職人の村上友哉です!
梅雨の季節に入りまして、革靴に防水スプレーを振らないとな...という意見をよく目にするようになりました。靴に防水スプレーを振っておくだけで防水と汚れを防ぐ効果があるということで利用されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、本来革靴には防水スプレーは不要なのです。
防水スプレーはなぜ不要なのか、どのような仕組みで水をはじくようにできているのか、防水スプレーが革靴に与える影響など、防水スプレーにまつわるあれこれについて解説していきます。
- ちなみに前回も紹介してた
- 防水スプレーには2種類ある。
- 革靴に防水スプレーを使ってはいけないのはなぜか。
- 結論、革靴にはワックスが一番良い。
- 防水スプレーを利用すべきなのはスニーカーと一部の革靴のみ。
- まとめ
ちなみに前回も紹介してた
少し前にも革靴に防水スプレーを振ってはいけないというお話をしましたが、皆様覚えていますでしょうか。
たぶんあなた、読んでいないと思うので要約をしておきました。
・きれいに仕上がらない
・ワックスを利用しなくても防水効果が得られる
こんな感じなので革靴に防水スプレーは不要だ!というお話です。
今回は仕上がり的な話ではなく、ちょっと科学的に防水スプレーについてお話しします。
防水スプレーには2種類ある。
そもそも大前提として、防水スプレーには2種類存在することはご存知でしょうか。シリコーンを主成分とする防水スプレーと、フッ素を主成分とする防水スプレーです。
シリコン防水スプレーの特徴
シリコーンを主成分とする防水スプレーはフッ素の物と比べて耐水性が高い特徴があります。
シリコーンの防水スプレーを塗布すると、シリコーン同士がつながり、表面に膜を生成します。膜が張ってあるため水は通ることができず、防水できるという仕組みです。防水というよりはむしろ撥水に近いと言えるでしょう。
しかし膜を張ってしまうことから、塗布した表面は覆われて酸素を通さない状態となってしまいます。そのため革靴や革製のバッグなどケアが必要な製品には基本的に使われず、ゴム製品などケアがほとんど不要なものに利用されます。
また、スニーカー等繊維が荒いものも膜を張りにくいためあまりお勧めできないです。シリコーン素材は比較的安価で生産可能であることから、シリコン配合の防水スプレーも安価であることが多いです。
フッ素防水スプレーの特徴
フッ素防水スプレーはシリコーンほど撥水性はないものの、幅広い素材に利用可能です。そのため、現在販売されている防水スプレーのほとんどはフッ素系の防水スプレーとなっています。
フッ素には
「非粘着性」(水にくっつかない性質)
「耐候性」(天候など環境によって変質しない=効果が持続しやすい」
という特徴が存在します。この特徴を上手に使って防水スプレーが作成されています。
シリコーンはシリコーン同士が結束して膜を作って水を通さないのに対して、フッ素はフッ素そのものに耐水性がある為、対象物(靴や鞄など)の繊維に絡ませることで耐水効果を得ます。
非粘着性は水のみならず土などもくっつけない性質がある為、防水スプレーをかければ防水だけでなく汚れ防止にもつながるということですね。
シリコン系よりもフッ素系防水スプレーの方が革靴にやさしい。
シリコンは結合して膜を作って防水するため酸素や外からの栄養を遮断してしまうことになってしまいます。そのため、シリコン系防水スプレーは利用できません。
それに対してフッ素系防水スプレーはフッ素の成分そのものが水をはじいています。フッ素自体はただ繊維に絡んでいるだけであり膜をはらないため、革靴でも安心して利用できるということになります。
ポイント
・シリコンは膜を作ることで防水する
・フッ素は成分的に水と混じらないから防水できる。
革靴に防水スプレーを使ってはいけないのはなぜか。
防水スプレーを使ってはいけない2つの革靴
・オイルドレザー
・ブライドレザー
これらの製品は、制作する過程で蝋やオイルをしみ込ませながら作成される革を利用します。しかしフッ素と蝋やオイルは全て交わらないため、防水スプレーを振りかけても繊維に絡みつくことができません。
フッ素と蝋やオイルが交わらない理由としては、やはりフッ素が持つ特徴である「非粘着性」にあります。わかりやすい事例だとテフロン加工のフライパンが挙げられます。
テフロン加工のフライパンは(簡単に言うと)フッ素を張り付けたフライパンです。フッ素を張り付けることで水はもちろん油をはじくようにできているのです。
このことから、防水スプレーを利用してはいけないというよりも、そもそも防水スプレーを振っても効果がない事をお分かりいただけるのではないでしょうか。
手入れした革靴に防水スプレーを塗っても意味がない。
先ほどの理由と同様で、靴磨きを行った靴に防水スプレーを振りかけても効果がありません。
靴磨きの過程において(大体の場合は)ろうを利用します。ろうを塗った革靴の仕上げとして防水スプレーを塗りつけたとしても、フッ素が結局はじかれて防水できません。
さらに言えば水分が革靴の表面に残ってしまうため、鏡面仕上がりが崩れてしまったり、革靴にしみがつく原因となります。
一部革靴メーカーでは、クリーム→ワックス→防水スプレーの順番で手入れするように勧めていることが大半ですが、あれは少しでも製品を買わせるためのデマであると言えます。
(クリームとワックス両方に蝋成分は配合されてます。)
結論、革靴にはワックスが一番良い。
私がお勧めするのは、ワックスでの仕上げです。ワックスは当たり前ですが撥水効果もかなり高く、防水スプレー並みに働いてくれます。仕上がりも非常にきれいです。
午後からの豪雨。急な雨振りを想定して全面薄くワックス仕上げておいたリーガルは全ての水を弾き(ほぼ)ノーダメージ。
— 村上 友哉【神戸で靴磨き中】 (@uoh_mr2016_no5) June 11, 2018
tシャツやデニムが雨に晒され、体が雨に蝕まれていく中、革靴は一滴の浸水も許さず。かっこいい!#靴磨き #今日のアシモト pic.twitter.com/OEhLCWBDOT
手入れされた革靴に防水スプレーをかけるのは上記の理由からお金の無駄。防水スプレーを買うぐらならちょっと良いワックスを利用するのがお勧めです。
僕はKIWIのパレードグロスを利用しています。
防水スプレーを利用すべきなのはスニーカーと一部の革靴のみ。
防水スプレーを利用すべきなのは、手入れにろうやオイルを利用しないスニーカーや、革靴の中でもスエードなどが挙げられます。これらの製品を履いている方は撥水だけでなく汚れを防ぐという意味合いでも積極的に振っておくべきです。
防水スプレーは毎日振っても良い
これら防水スプレーを振って大丈夫な靴には、できる限り頻繁に防水スプレーをかけてあげることが大切です。
最初の方でも説明したように、フッ素はあくまで引っかかっているだけであって膜を張っているわけではないため非常に取れやすい状態にあります。
最低でも2週間に1回は防水スプレーをかける必要があり、毎日履くような靴であれば防水スプレーを毎日振っても問題ありません。
20~30cm離してまんべんなく塗る
言うまでもありませんが、防水スプレーは20~30cmしっかりと離してまんべんなく塗布するようにしましょう。防水スプレーを利用できる靴であっても、塗る距離が近すぎるとしみの原因になります。
また色の薄いものや、革靴でもハラコ素材やヌバックなどはシミになりやすいので気を付けて塗布する必要があります。(目立たないところで試してから塗布するようにしましょう。)
まとめ
今回は防水スプレーに関するあれこれについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。今回の内容のまとめは
・防水スプレーはシリコーンとフッ素の2種類
・フッ素の防水スプレーが主流だが、手入れされた革靴には効果なし&逆効果。
・防水スプレーを使うべきなのはスニーカーやスエード素材の革靴。
何度も言いますが革靴に防水スプレーは不要です!効果のない防水スプレーの使い方をしている方は、ぜひ改めてみてね。
こっちも読んでみてね!
めっちゃおすすめ。