雨に濡れたあと、家に帰って革靴を見てみると表面がボコボコになっている..なんてことありませんか?
比較的安価なものから高級なものであっても、革靴の素材が「革」である以上はどうしても起こってしまうことが多い現象なのです。革は残念ながら水にそれほど強くないですからね。
形がどれほどかっこいい革靴でも、表面がボコボコしている状態ではやはりかっこ悪いもの。見た目でいうとニキビみたいですし、お世辞にもきれいだ、味があるとは言いにくいですよね。
でも悲観しないでください。そのボコボコは自分で対処できます。
そういうわけで今回は、このボコボコを自宅で簡単に治すことができる方法について解説します。
雨に濡れて表面がボコボコになる原因とは?
このボコボコのことを通称「銀浮き」と呼ぶ
雨に濡れて革靴の表面が凸凹と浮きだってしまう状態のことを一般的に「銀浮き」と呼びます。
銀浮きになってしまう原因というのは複数あるため、一目銀浮きを見た段階では原因がわからないことが多いのですが、一般的な原因としては次の2種類が挙げられます。
・雨に濡れて革が柔らかくなってふやけてしまい、形が戻らないまま乾燥して表面がぼこぼこのまま固まってしまった。
・雨に濡れたことで日ごろから革靴内部に溜まっていた汚れや汗の成分(塩分)などが毛細血管現象によって押し上げられて表面に出てしまった。濡れた革は柔らかいため、表面にくっきりと出てしまう。
(毛細血管現象とは、繊維の隙間を上下左右、重力関係なく液体が浸透する現象の事。革はたんぱく質でできた繊維の集合体であるため、その隙間を伝って水分が移動する可能性があります。
つまり、銀浮きというのは雨によって引き起こされる可能性があるトラブルの一つであり、分類的には雨ジミの一種、とりわけたちの悪いシミであると言えますね。
ちなみに革靴の革表面のことを「銀面」と呼び、その銀面が浮いてしまう現象であるために銀浮きと呼ばれるわけですね。
表面がボコボコになってしまう雨ジミということで「ボコジミ」と呼ばれたり、凸凹の表面具合を隕石衝突の跡に例えて「クレーター」と呼ばれることもあります。
おそらく靴磨き関連の本や他のWEBサイトなどで銀浮きの治し方について調べる際に「銀浮き」「ボコジミ」「クレーター」などと様々な名称で紹介されることがありますが、どれも同じ現象のことを指しています。
靴磨き初心者だと別の現象だと思ってしまうことがありますが、どれも同じなのでそのあたりを理解しておくと良いでしょう。
銀浮きを治すために行うべき事とは?
銀浮きと治す方法としては大きく次の2種類が挙げられます。
・革表面を濡らして平たく戻してあげること
・革内部に溜まった汚れを取ってあげること
表面に銀浮きが発生した際、その大きな原因として2つあることを先ほどご紹介しました。それらはそれぞれ対処方法が異なります。
まず前者の革がふやけて固まってしまっただけなのであれば、再度革に水分を含ませた状態にして革を柔らかくして平らになるように矯正してあげれば銀浮きはきれいに治ります。
次に後者の汚れが革内部に溜まっているケースであればそれを抜いてあげるのが最も効率の良い対処方法になります。一言でいうと丸洗いですかね。
整理すると、銀浮きの解決方法としては次の3パターンが存在します。
・デリケートクリームを塗りこんで平たく押し戻す
・水を染み込ませて平たく押し戻す
・サドルソープなどの洗剤で丸洗いする
今回紹介するのはデリケートクリームを塗りこむ方法
今回紹介する銀浮きの解決方法は、「デリケートクリームを塗りこんで平たく押し戻す」方法になります。先ほど3パターンあることをご紹介しましたがそれらのなかでも最も手軽に実践できてお手軽。使用する道具も少ないほか失敗する可能性が少ないためです。
後者になればなるほど、銀浮きが解決できる可能性が高まりますが失敗する可能性も高くなります。元々水に弱い素材に水を使って修復するわけなので。毒をもって毒を制すと言った感じなのでしょうか。
靴磨き職人のように常日頃からこのようなメンテナンスをするのであれば良いのでしょうが普通は頻繁に銀浮きしている靴を対処することなんてないと思いますし、いきなりこれらの手入れをするのは気が引けるはずです。かえって水シミを作る原因となったり、革を傷めたりする可能性があるからですね。
デリケートクリームを使って銀浮きを治す方法の場合は軽度の銀浮きまたは、できてから日が浅い初期段階の銀浮きに対して効果を発揮するケースが多いです。それでも水シミなどのトラブルを引き起こすことは少ないので、銀浮きを発見したらまず今回の方法を試してみると良いでしょう。
なお、このデリケートクリームを使った対処方法でも銀浮きが治らなかった場合は2番目、3番目というように徐々に試していくと良いでしょう。
革靴の銀浮きを治す方法
必要なもの
【必ず必要なもの】
・クリーナー
・布
・デリケートクリーム
・表面が平らな棒
【あると良いもの】
・馬毛・豚毛ブラシ
・クリーム
まず必ず必要なものとしては、4点ほど。クリーナー、布、デリケートクリーム、表面が平らな棒になります。
クリーナーと布は汚れと古いクリームを落とすために利用します。表面に汚れや古いクリームが乗ったままだと、水分が内部に浸透してくれないため革をふやかして銀浮きを伸ばすことができないためです。
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なお鏡面磨きなどワックスが表面に乗っている状態であれば通常のクリームでは落とせないため、鏡面を落とす専用のクリーナーを利用することをお勧めします。これらの使い方は別記事にて詳しく紹介してあります。
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次にデリケートクリームについてですが、今回の役割は革内部と表面をふやかすことにあるため、水分量が多いものが望ましいでしょう。
ちなみに後で書きますがデリケートクリームと言っても様々な会社から販売されています。今回はコロニル1909シュプリームクリームデラックスと、デリケートクリーム両方を使って試してみたのですが、前者は吸収率が高すぎて濡れた状態をなかなか維持できませんでした。なのでデリケートクリームを利用することをお勧めします。
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また、一応代替案としてはハンドクリームなどが挙げられます。ハンドクリームはどの家庭にも一つぐらいあるはず。冬場は使いますが夏場は使わないので余っている家庭も多いのでは?
デリケートクリームとハンドクリームの主成分や役割は大体同じですので、デリケートクリームなんて買いたくない!なんて人は代わりに利用してみるといいでしょう。
ただし革靴用に作られたものと人間用に作られたものは、成分は大体同じであってもその配合割合が異なるので吸収率などが異なるほか、ハンドクリームによっては様々な添加物が配合されていることもあるので全部がOK!とは断定できないのが難しいところ。
まあそのあたりが心配な方は素直にデリケートクリームを用意しておくと良いでしょう。銀浮きを治すほかにも、今後のデイリーケアにも利用できる万能選手なので持っておいて損はないでしょう。
最後に表面が平らな棒について。これについてはボールペン等、平らであれば何でも大丈夫です。さらに言えば棒ですらなくても良いです。靴クリームのビンの角なども平らなのでそれで伸ばしてあげても全然問題ありません。大事なのは平らであること。今回僕はマッキーを使って伸ばしています。
棒のほうがやりやすいので一応ここでは棒とさせていただいています。
また、補足としてあったほうが良いものとしては、馬毛・豚毛ブラシと靴クリームになります。
馬毛ブラシはクリームを落とす前のほこり落としとして利用します。指などでは取れない部分やシワ部分のほこりもこのブラシを使えばきれいに落ちます。普段からのケアでも使う用品なのでできれば購入しておきたい1本。下記のブラシは安価で、値段の割には使いやすくて気に入ってる1本。
後は豚毛ブラシとクリームについてです。銀浮きを治す際に革をさするので細かい傷が入ることがあります。それらをきれいに隠してくれるのがクリームの役割。
クリームの成分は有機溶剤・油脂・蝋(ろう)成分となっており、特に蝋成分が表面の細かな傷に入り込んで埋めてくれるため、きれいに目立たなくなります。
また、靴全体につやを出す効果もある為、通常のデリケートクリームだけで仕上げるよりも圧倒的にきれいな仕上がりとなります。
銀浮きの治療云々とはそれほど関係ないので強くは押しませんが、靴磨きをするなら必ず持っておきたいアイテムです。
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手順解説
この後実際にやっていきますが、まず最初にざっくりと手順について解説します。
1.馬毛ブラシでほこりをとる
2.クリーナーを使って表面の汚れ・古いクリームを落とす
3.デリケートクリームを塗り込んで革を柔らかくする
4.丸い棒で押して表面を平らにする
5.乾燥させる
6.クリームを塗りこむ
7.豚毛ブラシでブラッシング
8.残ったクリームをふき取って完成
となります。
1と、6~8は銀浮き直接的に治す手順というよりは仕上げにあたりますので、実質銀浮きを治す手順としては2~5になりますね。
まあせっかくするのであれば一通りやってしまうことをお勧めします。
実際にやってみよう!
それでは実際に銀浮きを対処していきます。今回使用するのはヤンコのキャップトゥ。つま先部分に銀浮きができてしまっています。
全体
左
右
おそらくつま先の鏡面部分のうち、しわになっている部分から雨が浸透してしまってその周囲から銀浮きが発生してしまったのでしょう。結構この辺りは銀浮きしやすい部分ですね。
鏡面仕上げをしているのですがそれを押し上げるようにしてニキビのように凸凹ができています。そのせいで鏡面の一部が取れてしまっていて何とも不格好となっています。遠目で見てもわかるぐらいにボコボコしていますね。
余談ですが、この記事作成のために銀浮きしている革靴を購入してきたこともあり、結構前から銀浮きしていたことが想定されます。(しかも購入から1か月程度放置していました..)もしかすると今回の簡易的な対処では収まらない可能性もありますね。
何はともあれ、実際に銀浮きを対処していきましょう。
馬毛ブラシでほこりをとる
まず最初は馬毛ブラシでほこりを取ります。全体をブラッシングするだけ。非常に簡単です。
クリーナーを使って表面の汚れ・古いクリームを落とす
次に、表面の汚れや古いクリーム・ワックスなどを落とします。つま先部分に鏡面磨きの加工がかかっていたのでまずはそれを落とさなければなりません。
ハイシャインクリーナーを利用してつま先のワックス成分を溶かして落とし、ある程度落ちた時点でクリーナーに切り替えて全体をふき取っていきます。実際にされる場合は先ほども紹介した通り過去記事を参考にするとやりやすいですよ。
今回の場合はつま先部分が鏡面仕上げとなっているため、まずはつま先のワックスを落とす作業から入ります。
ある程度落ちたら次はクリーナーを使います。クリーナーはなんでも良いのですが、今回はコロンブスのツーフェイスローションを利用しています。コスパ重視の方はMモウブレィのステインリムーバーを使うと良いでしょう。標準的な性能で初心者向けです。
結果、このように鏡面をきれいに落とすことができました。落としてみると表面が凸凹としていることが分かります。
注意点としてはクリーナーをつけすぎないことです。クリーナーの分量は布が軽く湿る程度で十分です。革靴の革表面に水分がつくようであればクリーナーの取りすぎです。
万が一水分が付着して取りすぎたなと思った場合には、布の乾いた面でふき取ってあげましょう。
また、クリーナー等のさすりすぎた場合は革の色が落ちる可能性もありますが、後々のケアで補色することも可能ですので落ち込まなくとも大丈夫です。
デリケートクリームを塗り込んで革を柔らかくする
クリーナーで表面汚れ・古いクリームが落ちた状態の革は、デリケートクリームの成分が内部に浸透しやすい状態となっています。
通常デリケートクリームは大量に塗り込むようなものではないのですが、今回は革に水分を与えて湿らせる&柔らかくすることが目的なのでかなり多めに塗り込むようにしましょう。表面が濡れた状態が続くぐらいの量ですね。
ただし、革の一部分のみに塗り込んでしまうと不要な水シミを引き起こす原因となるので、革全体を塗り込むようにします。革靴というのはホールカット(革一枚で作った革靴)を除いて複数の革を縫い合わせてできています。そのため、そのパーツ全体を濡らしておけば失敗することは少ないと言えるでしょう。
今回はキャップトゥのキャップ部分(つま先の革)が銀浮きしているので、それら一体にデリケートクリームを浸透させます。
なお、最初はコロニル1909シュプリームクリームデラックスを利用していましたが、あまりにも吸収力が高くすぐに浸透してしまうため、途中からMモウブレイのデリケートクリームに切り替えています。銀浮きを治す際には後者のほうが適正ですね。
塗り込む際の注意点としては、力を入れて刷り込むというよりは乗せるという感覚でデリケートクリームを入れることです。力を入れて刷り込むとどうしてもムラが発生してしまってシミを作ってしまう原因となる為です。
なお、革はたんぱく質の繊維の集合体となっていて、クリームを浸透させるためにはその繊維に沿って入れ込む必要があるのですが、それらの方向は目視できないため、円を描くようにしてクリームを入れ込むと効率よく浸透します。
丸い棒で押して表面を平らにする
デリケートクリームを塗って水分が浸透し、革がしんなりとしたら平らで丸い棒の登場となります。今回使うのはマッキーですね。
濡らした部分を上から押さえつけるようにして銀浮き部分を押し込みます。押し込みながらグーッと動かして伸ばします。ゆっくりじっくりとするのがポイントです。軽く擦って動かす程度ではあまり効果が見込めないので、しっかりと圧力をかけるように意識します。マッサージみたいな感覚ですね。
一度だけでは銀浮きが収まらないことが一般的なので、ある程度押し込んで表面が乾いたら再度デリケートクリームを塗布し、再度押し込む...という作業を治るまで繰り返しましょう。
ちなみにですが、クレムなどクリームのビンを利用して伸ばすことも可能ですよ。
5.乾燥させる
平らになったら表面を乾燥させます。銀浮きを治した直後の革は水分を多く含んでいる為、少し乾燥させてあげることでその後のトラブルを防ぐことができます。水シミなどができてしまった場合は再度修正する必要がありますからね。
目安としては革の色が元通りになるぐらいです。水分を含んだ革はそうでないものと比べて色が若干濃くなることがほとんどです。クリームを塗布していない他の部分と比べて遜色なければ、次の工程に移っても大丈夫です。
銀浮きを治す工程を数回にわたって繰り返した結果、(頑固な銀浮きということもあり)完全には治らなかったもののかなり目立たない状態まで戻すことができました。
どうでしょうか?最初と比較するとかなり改善されたのではないでしょうか。
クリームを塗りこむ
終わりましたら次はクリームを塗り込む工程に入ります。銀浮きは前の工程の時点で治っているので必須ではありませんが、この工程をすることできれいに仕上がるほか、万が一革に微量の傷をつけてしまった場合でも蝋成分が傷を埋めてくれるため目立たなくなります。
つける際は薄く塗布するほか、デリケートクリーム同様に円を描くようにして入れていくと効率よく革に浸透させることができます。また、シワの入っている部分にはその方向に沿って入れてあげるようにしましょう。
なお、クリームを塗り込むと補色効果が得られますが、前の段階でデリケートクリームなどによる油分補給が行われているため、色の入り方が弱い可能性があります。そのような場合は再度クリーナーで油分を抜いてから色を抜くと効果的です。その日すぐに行う必要はないですけどね。
豚毛ブラシでブラッシング
クリームを塗布し終えたら豚毛ブラシでブラッシングをしていきましょう。ブラッシングをすることで塗布したクリームが革の内部まで浸透します。
クリームを塗布するときは表面に乗せるような感覚で行いますが、豚毛のブラシは成分を革の中に入れ込むことが目的なので、押し込むように強くブラッシングを行います。そのようにすることで革靴が革内部からじんわりと光るような状態になります。
残ったクリームをふき取って完成
ブラッシングを終えた後は残ったクリームをふき取ります。ブラッシングを行ってなお表面に残っているクリームは革内部に入りきらなかった、いわば余りのクリームです。これらは不要なのでふき取ってしまいましょう。
ふき取ることで服や靴下など不要な場所にクリームが付着してしまうと言ったトラブルを防ぐことができます。
ふき取る布は汚れ落としで利用したもので大丈夫ですが、ポリッシュグローブというふき取りと艶出しを兼ねた商品も存在します。比較的安価で購入可能なので、仕上げようとして揃えておくのも良いでしょう。
ちなみにクリームをふき取った後はお好みでワックスなどを使用して鏡面仕上げなどにするのも良いでしょう。今回はこれら一連の手入れを行った後、鏡面仕上げにて仕上げてみました。
銀浮きを補正する前も鏡面仕上げとなっていましたが、それとは比べ物にならないぐらい改善されてますね!
まとめ
今回は雨ジミの一種、「銀浮き」を簡単に治すことができる方法についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
今回紹介した方法ですべてが治るわけではないのですが、銀浮きを対処する方法の中でも最もお手軽にできる方法です。失敗の可能性も少ないためて初めの対処として行うのに持って来いの方法であると言えます。
特に初期や軽度の銀浮きに効果的な方法ですので、万が一銀浮きを作ってしまったかも!というときには放置せず、できる限り早い段階で試してみてくださいね。
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