「シリコンが革靴に害を与える説」についてご存知でしょうか。
靴磨きの本や雑誌において、簡易的な靴磨き道具を利用してはいけないと解説されていることがあります。その理由は簡易的な靴磨き道具のほとんどに「シリコン」という成分が含まれているためです。
しかし、なぜシリコンを利用した靴磨き道具は使ってはいけないのでしょうか。明確にシリコンがなぜ革に悪いと言われるのか、その理由を知っている人は比較的少数なのではないでしょうか。
そういう訳で今回は、
・そもそもシリコンとは。
・シリコンはなぜ悪者扱いされるか?
・シリコンは革にどのような影響を与えるか
・シリコン入り靴磨き用品は使ってはいけないのか?
などなど、細かい疑問点についてお話していきます。
そもそもシリコンとは。
シリコーン とは、シロキサン結合による主骨格を持つ、合成高分子化合物の総称である。 語源は、ケトンの炭素原子をケイ素原子で置換した化合物を意味する、シリコケトン から。 ただし、慣用的に低分子シラン類を含む有機ケイ素化合物全般を指す意味で使用される場合もある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B3
シリコンは具体的にどのようなものかは難しいので置いておくとして、次のような性質があります。
・撥水性がある
・艶出し効果がある
・べたつかない
シリコンはシリコン素材同士がくっつくことで吹き付けた表面に膜を張るようになります。膜を張ることで水を通さなくなるため撥水性が出たり、凸凹がなくなるので艶出し効果が得られます。さらにはシリコン同士がくっついているだけなので、表面そのものはべたつかないといった特徴があります。
そのため、シリコンはシャンプーを始めとしたさまざまな場所で活用されています。靴磨き用品の場合にはこれらの特徴を応用して艶出し材や防水スプレーという形で活用されています。
http://columbus.co.jp/products/index.html
安価で製造できるので、簡易的な靴磨き用品にシリコンが含まれていることが多くあります。さっと磨くだけでツヤがよみがえるのはほんと感動ですよね。
シリコンはなぜ悪者扱いされるか。
シリコンは塗った後なかなか落ちない。
シリコンが悪者扱いされる一番の理由としては、付着したシリコンが中々落ちてくれないことにあります。
艶出し材や防水スプレーを使って革靴にシリコンを塗布した場合、シリコンは革の繊維に入り込むような形で付着するうえ、シリコン素材同士がくっつきあうので表面を膜で覆ってしまいます。
一見すると見栄えが良くなりますし、水はもちろんのこと様々な汚れを防いでくれるのでかなり優良ではあります。
しかしその特性上、靴磨きでクリームを入れて栄養補給をしようとしてもシリコンの膜が邪魔をしてうまく浸透しないほか、アルコールやアセトンといった有機溶剤への体制も強いので、一度ついたシリコンをはがし取るのは至難の業なのです。
そのため、靴磨きを日ごろからするのであれば極力シリコン製品を使わないようにしたほうが良いと言えるでしょう。
シリコンが革に与える影響について
シリコンが革に与える影響は次の通りです。
・長持ちしない
・革割れ(クラック)の原因となる。
・靴クリーム、ワックスの載りが悪くなる。
まず、シリコンを使うことで油分や水分が入りにくくなってしまいます。
革は元々生きていた動物の皮をなめしたもの。私たち人間は食べたり飲んだものを分解しながら、内部から皮膚に油分や水分といった栄養を補給しています。しかし、革な内部からこれらの成分を供給できないので、私たちが外部から供給してあげなければなりません。
しかし、シリコンのせいでこれらが妨げられることで十分な栄養が補給されず、劣化のすす見方が早くなってしまいます。(クリームを塗るのは革の繊維に栄養を与えて劣化を防ぐ役割を持つ)
こういった理由で栄養補給が難しくなることで、革割れの原因となります。
さらに言えばシリコンは先ほどもお話ししたように有機溶剤への耐性がかなり強くなっています。そのため、クリームを入れたり、ワックスを塗ろうとしても上手に靴に載ってくれないことが多いです。つまり、靴磨きの仕上がりが綺麗にできにくいということです。
こういった理由から、靴磨きのプロの人々は口を揃えて「シリコンはだめ!」という訳です。
シリコンを含む靴磨き道具は使ってはいけないのか。
基本的にはだめ
当たり前ですが、基本的には使わないほうが良いことは間違いありません。きちんと手入れを行えば5年、10年と履ける靴がこのような道具を使ってしまったがためにたった1年で靴を買い替えなければならなくなったということも多いです。
きちんと手入れをすることでより長持ちすることを知っている私たちからすれば、シリコンを含む製品を進める理由はありません。
ただし、次のような人に限ってはシリコンを含む靴磨き道具を使えばよいと考えています。
シリコンを含む靴磨き製品を使ってよい人
具体的には以下のような人です。
・安い靴を毎年履き捨てる前提で履いている
・靴磨きに興味がない人
・合皮の靴
靴を履き捨てる前提で履いている方や、靴磨きに興味のない人にとってはシリコンを含んだ靴磨き道具で靴を磨いても良いかもしれません。どうせ靴は買い替えるのだから、簡単にきれいになる道具があればいいという人向きです。
また、合皮の人は使っても大丈夫です。基本的に合皮はクリームなどで栄養補給ができないため、本革と比べ圧倒的に劣化が早いためです。元々クリームが浸透しないのであれば、塗っても大丈夫と言う考え方です。
まとめ
今回はシリコンが革にとって良くない理由や、与える影響についてお話ししましたがいかがだったでしょうか。
まとめると、
・安い靴を履き潰す前提の人(高い靴磨き道具を使うと割に合わない人)
・合皮の靴を履いている人
・靴磨きに全く興味ないし面倒だけど、多少靴が光っておいてほしい人
このような人はシリコンが含まれた製品を使ってもよく、逆に、
・高級靴を履いている人
・少しでも長持ちさせたい気持ちがある人
・本格的な靴磨きでピカピカに磨き上げたい人
このような人々はシリコンを含まれた製品を使わないほうが良いと言えます。
シリコンは私たちのような本格的な靴磨きを行っている人からすれば使用はご法度な成分ですが、あまり靴磨きをしない方であれば安価に入手でき、簡単に光らせることができてお手軽な靴磨き道具になりえます。
自分がその靴とどのように付き合っていきたいか?を考えて、シリコン製品を使うのか使わないのかを吟味されてはいかがでしょうか。